卵巣は、子宮の両脇に1つずつある親指大の楕円形の臓器です。元々腫瘍が生じやすい臓器で、ここに発生する腫瘍が卵巣腫瘍(卵巣嚢腫)です。肥大化すると30cmを超えることもあります。 卵巣腫瘍には様々な種類がありますが、大別すると、腫瘍の中に液体が溜まる「嚢胞性卵巣腫瘍(卵巣嚢腫)」と、硬い塊が大きくなる「充実性卵巣腫瘍」に分類されます。卵巣腫瘍の8~9割は嚢胞性卵巣腫瘍で、ほとんどは良性ですが、若い女性でも発症することがあります。
嚢胞性卵巣腫瘍(卵巣嚢腫)は、次の4種に分類されます。
卵巣腫瘍には、良性のもの、悪性のもの、その中間の境界悪性があります。大半は嚢胞性の良性腫瘍ですが、ごく稀に悪性(卵巣がん)の場合もあるので注意が必要です。 また、子宮内膜症性卵巣嚢腫は、40歳以降で腫瘍の大きさが4cm以上になると悪性化する確率が高くなると言われています。閉経後でもがん化することがあるので、いずれにしても早めに適切な治療が必要です。
卵巣腫瘍(卵巣嚢腫)は、腫瘍が小さいうちは、ほとんど自覚症状がありません。腫瘍が大きくなるにつれて、腹部が圧迫されるので、腹部膨満感や腹痛、腰痛、頻尿、便秘などの症状が現れます。下腹部のしこりのようなものに触れて気づくこともあります。 さらに腫瘍が大きくなると、卵巣の根元がねじれる「茎捻転」という状態になり、激しい痛みや嘔吐、意識消失などのショック状態になり、緊急で手術が必要になることもあります。
これらの症状がある方は、卵巣の病変が疑われます。 京都市右京区の西院レディースクリニックまでお気軽にご相談ください。
漿液性嚢腫、粘液性嚢腫は、いずれも原因が分かっていませんが、卵巣や卵管の表層が腫脹し、水分や粘液が内部に侵入することで起こります。 子宮内膜症性卵巣嚢腫(チョコレート嚢腫)は、子宮内膜症が原因で、本来は子宮にあるはずの子宮内膜が卵巣で増殖を繰り返し、月経血が排出できずに卵巣内に溜まることで起こります。 皮様嚢腫も明確な原因はわかっていませんが、受精していないのに卵子の細胞分裂が起こり、それが途中で止まるために皮膚や毛髪成分が腫瘍化すると言われています。
診察と超音波検査で卵巣腫瘍の有無を診断します。 腫瘍の大きさや内容物によって詳しく調べる必要がある場合はMRI検査を行い、良性か悪性かを総合的に判断します。
悪性が疑われる場合は手術を行います。 治療方法は、腫瘍だけを摘出する腹腔鏡手術、卵巣を摘出する開腹手術など、様々な方法があるため、年齢や妊娠希望、腫瘍のサイズを考慮しながら決定していきます。 卵巣を摘出する場合でも、なるべく片側の卵巣は残すように治療を行います。
また、腫瘍が非常に大きく、癒着が酷い場合で、閉経を迎えた方であれば、卵巣、卵管、子宮を摘出する「子宮・付属器摘出術」を行うこともあります。