月経期間中、月経に伴って起こる病的症状を「月経困難症」と言います。一般に生理痛と呼ばれる下腹部痛や腰痛を主症状として、腹部膨満感、吐き気、頭痛、疲労感、脱力感、食欲不振、イライラ、下痢、憂うつなども含まれます。
月経困難症の原因には2タイプあり、1つは強い子宮収縮が原因である「機能性月経困難症」で、次のような特徴があります。
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もう1つは、子宮や卵巣の病気が原因である「器質性月経困難症」で、次のような特徴があります。
生理不順は、生理の周期や期間に乱れがある状態のことで、月経の悩みで一番多いとされています。 生理は25~38日周期であれば正常とされています。25日より短い周期で起こるものを「頻発月経」、逆に39日より長い周期で起こるものを「稀発月経」、3ヶ月以上来ないものを「無月経」と呼びます。また、生理期間が1~2日で終わる「過少月経」、逆に1週間以上続く「過多月経」があります。 生理不順の原因は、生理をコントロールする女性ホルモンと大きく関わっています。女性ホルモンの分泌に関わる脳下垂体、視床下部、卵巣などに異常がある場合、ホルモンバランスが崩れて生理不順が起こります。
健康な方でも1週間程度の遅れはあるので、あまり心配はいりません。ただし、妊娠の可能性が少しでもある場合は、市販の妊娠検査キットで調べてみましょう。
20歳以上でこのような症状がある場合は、当院を受診してください。10代で妊娠を希望されていない場合は、様子をみても大丈夫でしょう。
無排卵の可能性がありますので、年齢に関わらず早めに当院を受診してください。ただし初潮から2~3年の間であれば、もう少し様子をみても大丈夫です。
女性ホルモンの分泌量に問題がある可能性があります。年齢に関わらず早めに当院を受診してください。
できるだけ早く当院を受診してください。 また、生理がずれて大事な行事と重なってしまうなど心配がある場合には、生理の時期をコントロールすることができますので、お気軽にご相談ください。
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月経前症候群(PMS)は、月経が始まる3~10日ほど前から身体や心に色々な症状が起こる病気です。症状は月経が始まると弱まったり、なくなったりします。月経のある女性のおよそ70~80%は月経の前に何らかの不快な症状を感じると言われていますが、PMSはその症状の程度が強い状態のことを言います。
PMSの症状は様々で、軽いものから日常生活に支障をきたすほどの重いものもあります。
PMSのうち、特に「こころ」の不調が激しく、日常生活や対人関係にまで影響を及ぼすようなら「PMDD(月経前不快気分障害)」かも知れません。PMS患者のうち、約5%がPMDDだと言われています。PMDDは、月経が始まる1~2週間前から、次のような症状が現れます。
人によって症状が異なるPMSは、原因がはっきりと分かっていない病気です。一説では、排卵から月経までの期間に症状が現れ、それが繰り返されることから、排卵後に分泌される女性ホルモンの「エストロゲン」と「プロゲステロン」の急激な変動が関わっていると言われています。その他にも、「気持ちを落ち着かせる神経伝達物質の影響」や「交感神経・副交感神経の乱れ」など、様々な原因が考えられています。 これらに加えて、忙しい時や、悩みを抱えている時に症状が出やすいという人や、からだの症状だけが強く出たり、逆にこころの症状だけが強く出たりするなど、人によって症状も様々です。このことから、PMSの原因を1つに特定することは難しく、いくつもの要因が影響し合ってPMSを引き起こしていると考えられています。
まずは詳しい問診を行い、症状や発症時期、月経周期、妊娠・出産歴、生活環境などを確認していきます。 問診の内容をもとに、代表的な症状が現れる時期とその再現性により診断します。 過去3回の月経周期で、月経前の5日間に「からだの症状」か「こころの症状」のうち少なくとも1つが連続して存在すること。さらには、月経開始後4日以内にこの症状が解消し、少なくとも13日目まで再発しないことなど、いくつかの条件に適合すると、PMSと診断されます。
はじめは、カウンセリング、生活習慣改善のための指導、あるいは運動療法を行います。PMSの改善には、有酸素運動を中心とした定期的な運動、禁煙、アルコール摂取制限、規則正しい睡眠や生活、ストレスの解消などが有効とされています。また、カルシウム、ビタミンB6、マグネシウム摂取なども症状を和らげる可能性があると考えられています。 これらの対策を行っても症状が改善しない場合には、エストロゲンとプロゲステロンが配合された低用量経口避妊薬(ピル)を処方する場合があります。 浮腫や乳房緊満感(乳房の腫れ、硬化、痛み)に対しては利尿薬や鎮痛薬、また多様な症状に対しては漢方薬を処方することもあります。 精神症状が強く現れ、日常生活に支障を来すような重症の場合には、抗うつ薬を処方することもあます。
一般的な経血量は、最も多い日でもナプキンを2時間おきにかえるくらいと言われています。これに対し、経血量が非常に多く、生活に支障を来すような場合を「過多月経」と言います。
「月経過多チェック」のうち1つでも該当していたら「月経過多による貧血チェック」もやってみましょう。
過多月経には、原因となる子宮の病気「子宮筋腫」「子宮腺筋症」「子宮頸がん」などがある場合と、体内のホルモンや血液の状態が影響している場合があります。
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血液検査で鉄欠乏性貧血が認められ、この貧血が月経を原因として起こっていることがわかった場合は、過多月経と診断されます。
■ミレーナ
ミレーナから黄体ホルモンが放出されることで、子宮内膜の増殖が抑えられ、経血量の減少、月経痛の緩和が期待できます。
■ホルモン療法
黄体ホルモンと卵胞ホルモンが含まれたピル、黄体ホルモン製剤、GnRHアンタゴニスト製剤、タナゾール製剤などの投薬によって、女性ホルモンのバランスを調整します。
■手術療法
症状が重度である場合や、子宮筋腫や子宮腺筋症、内膜ポリープなどの疾患を原因とする場合には、手術を検討します。将来的な妊娠の希望の有無、疾患の程度などを考慮し、十分に話し合った上で手術の方法を選択します。
ホルモン異常や病気が原因で、月経以外に性器から出血することを不正出血といい、婦人科への受診理由で「生理不順」「おりもの異常」と並んで多い症状です。 大量に鮮血が出るような場合はもちろん、おりものに少量の血が混ざっているような場合でも不正出血になります。
不正出血には様々なパターンがあり、またどの程度が不正出血か判断に迷う方もいらっしゃるでしょう。 まずは、以下のセルフチェックで当てはまるものがないかチェックしてみてください。
不正出血の原因となる病気は数多くあります。また、どこから出血しているのか自分では分からないことが多く、正確に診断するためにも当院での受診をおすすめします。 不正出血の原因は、以下の病気が考えられます。
不正出血の原因を調べるために、次のような検査を行います。
不正出血の治療は、原因となる病気に応じた治療を行います。 ホルモンバランスの乱れが原因と考えられる場合は、少量の不正出血であれば生活習慣の改善などで経過観察をします。長く続く場合や出血量が多く貧血を伴う場合は、ホルモン剤によりホルモンバランスを整えます。 ポリープやがんなどが原因の場合は、患者さんとよく話し合った上で、治療方針を決定していきます。
エストロゲンというホルモンの分泌が増えると、子宮は赤ちゃんを産むための準備を始め、子宮内膜が増殖して排卵が行われます。排卵後には、プロゲステロンというホルモンの分泌量が増加し、子宮は妊娠に適した状態になります。妊娠がなければ女性ホルモンの分泌は減少し、増殖した子宮内膜は剥がれ落ちて血液と共に体外に排出されます。 このように、月経は女性特有のホルモンによって調整されています。
生理のメカニズムに欠かすことのできない「エストロゲン」と「プロゲステロン」が合成されている「ピル」を活用すると、身体が女性ホルモンの分泌の有無を勘違いすることで、生理日を早めたり遅らせたりすることが可能になります。
生理を早める場合には、低用量ピルまたは中用量ピルを用います。 低用量ピルの場合は、ずらしたい生理の1つ前の生理中からピルを飲み始める必要がありますが、先の予定が分かっている場合であれば生理を早めることができます。 予定日までの日数が短く、2週間以上低用量ピルを飲めない場合は、中用量ピルを用います。 中用量ピルで生理を早める場合は、10日以上中用量ピルを連日服用し、止めるとその2~3日後くらいに生理が来ます。
次回の生理予定日が大まかに分かるようであれば、生理を予定日よりも遅らせることが可能です。生理を遅らせる場合には、中用量ピルを次回の予定日の5日前から内服します。 ピルを飲んでいる間は生理になりませんが、飲むのを止めてから2〜3日で生理が来ます。移動できるのは長くても7~10日程度とお考えください。
生理を早める方法も遅らせる方法も、ピル全般に見られる吐き気や頭痛などの軽い副作用が発現する可能性があります。また、非常に稀ですが血栓症を起こす可能性もゼロではありません。 ですが、生理日を移動させること自体は、身体に悪影響があるわけではありません。月経移動の後、次の生理は元々の生理周期と同じ間隔で起こります。