子宮内膜症とは、本来は子宮の内壁にある子宮内膜が、卵巣や腹膜など子宮の外側の部位で発生・発育する病気です。卵巣内で発生すると「嚢胞(チョコレート嚢胞)」を形成したり、腹膜で発生したりすると卵巣・卵管・腸の癒着が起こり、時には不妊の原因にもなります。
近年、子宮内膜症は増加傾向にあり、一旦罹患するとなかなか完治せず、閉経まで付き合う必要がある病気です。京都市右京区の西院レディースクリニックでは、患者さんに病気のことをよくご理解いただくと共に、患者さんのお考えに寄り添いながら、お一人おひとりのライフスタイルに合った治療方法を選択していただけるようにサポートいたします。
子宮内膜症には、次のような症状があります。
子宮内膜症の方の90%以上に月経痛が認められます。また同様に、約30%の方に不妊の傾向が見られます。直腸近くに癒着がある場合、一般的に生理前は便秘気味になり、生理が始まると解消されることが多いため、生理痛と排便痛が重なる場合もあります。
子宮内膜症の原因は、はっきりしたことがわかっていません。 有力な原因の1つに「子宮内膜移植説」があります。これは、月経血が子宮から卵管の方に逆流して腹腔内に流れ、その際に子宮内膜も一緒に移動し、腹腔内に子宮内膜が付着して成長した結果、発症するという説です。これもまだ明確に確定したものではありません。
子宮内膜症を放置していると、症状が進行して周囲の臓器や組織と癒着が起こります。ひどい月経痛や下腹部痛、腰痛、性交痛などを引き起こすほか、月経過多や不妊などの原因になることもあります。 「単なる月経痛だから」と放置していると、症状が進行して不妊のリスクが高まる可能性がありますので、気になる症状が見られる場合は早めに当院にご相談ください。
問診で症状や既往歴、家族歴をお伺いした上で、内診で子宮・卵巣の可動性や痛みの有無の確認を行います。その後、超音波検査で、子宮や卵巣の腫大(腫れ)の有無を確認します。腫大がある場合は、さらにMRI検査で詳細な検査を行います。卵巣チョコレート嚢胞については、MRI検査によってほぼ確実な診断が可能です。 また、血液検査も行い、血液中の「腫瘍マーカー」の増加の有無も確認します。
子宮内膜症の治療には、薬物療法と手術療法があります。 年齢、痛みなどの症状の程度、将来的な妊娠の希望、不妊症の有無などを確認し、患者さんに合った治療方法を選択します。
薬物療法には、対症療法とホルモン療法の2種類があります。 対症療法で主に用いられるのは解熱鎮痛剤で、月経痛のある方には有効です。妊娠を希望される方にも適当な方法ですが、症状の進行を防ぐことはできません。 一方のホルモン療法では、低用量エストロゲン・プロゲスチン配合剤やプロゲスチン製剤を用いて病巣の増大を抑える方法と、GnRHアゴニストと呼ばれるホルモン剤を用いて一時的に閉経したかのような状態を作り出す「偽閉経療法」の2種類があります。 どちらもメリット・デメリットがありますので、患者さんの状態や体質などによって使い分けることが重要です。
手術療法は、開腹手術と腹腔鏡手術に大別されますが、最近では腹腔鏡手術を選択されるケースが多くなっています。 腹腔鏡手術はお腹の中を観察する内視鏡を用いた手術で、開腹手術より傷が小さく痛みも少なくてすみます。また内視鏡により患部を拡大して確認できるので、病巣が深いケースにはとても優れた方法です。 妊娠を希望される場合は、卵巣や卵管をできるだけ本来の形や位置にする必要があるので、嚢胞や組織の癒着などだけを除去していきます。 一方で妊娠を希望されない場合は、「子宮全摘術」を選択することもあります。
子宮腺筋症とは、子宮内膜に似た組織が子宮平滑筋組織の中にできる疾患で、月経痛や月経過多などの症状を来します。子宮腺筋症に罹患した組織は、エストロゲン(女性ホルモン)によって進展・増悪するため、月経がある限り病気は進行し、それに伴い子宮筋層が厚くなり、子宮が肥大化します。 子宮腺筋症は30~40歳代の出産経験のある方に多く見られ、閉経する頃にはエストロゲンの分泌が減少するため症状は治まります。
35~50歳の女性に多い傾向があり、約20%の女性が発症すると言われています。しかし近年では、20~30代の発症者も珍しくありません。経産婦に多く、筋腫の手術や帝王切開、流産後の掻爬手術を受けた方に多く見られます。
子宮腺筋症は、閉経すると症状は自然に改善していきますが、思春期から成熟期の間は症状が徐々に悪化する傾向があります。治療せずに放置しておくと、子宮が肥大化を続け、月経痛、月経過多、骨盤痛などの症状が悪化します。重症化すると、足や肛門にまで痛みが及ぶこともあります。また、月経量が極端に多くなり、1回の月経で貧血症状が出ることもあります。
問診では、症状や既往歴・家族歴をお伺いした上で、月経痛や月経過多による生活への影響を確認します。 内診により子宮の大きさや、子宮の可動性、ダグラス窩や卵巣の状態を診察し、超音波検査(エコー検査)で子宮や卵巣の状態を検査します。 場合によっては、血液検査で腫瘍マーカーの検査、MRI検査で子宮腺筋症の位置や広がりの判断を行います。
子宮腺筋症の治療には、薬物療法と手術療法があります。
月経痛や下腹部痛がある場合には、鎮痛剤により症状を抑える治療を行います。 痛みが強い場合はホルモン療法を行います。「黄体ホルモン療法」や「低用量エストロゲン・プロゲスチン療法」は、病巣の縮小と症状の改善が期待できます。 また、GnRHアゴニストと呼ばれるホルモン剤を用いて一時的に閉経したかのような状態を作り出す「偽閉経療法」は、月経を止めることで、病変の縮小をはかります。 症状が軽快しない場合や、薬の副作用がひどい場合には手術による治療を検討します。
妊娠を希望される場合は、病変部だけを切除する「子宮腺筋症核出術」が選択されることもありますが、その有用性はまだはっきりとわかっていません。患者さんの子宮の状態によって、開腹手術、腹腔鏡手術、膣式手術のいずれかの方式で行います。 将来的な妊娠を希望されない場合は、「子宮全摘術」を選択します。