月経前や月経の期間中に乳房の痛みを感じることがあります。乳房を構成する組織である乳腺は女性ホルモンの影響を受けやすく、月経前や月経期間中は乳房の痛みを感じやすい時期になります。 基本的に乳房の痛みは乳がんとは関係ないことが多いですが、乳房が腫れたり、熱を持っているなど、痛み以外の症状がある場合は炎症性乳がんや乳腺炎の可能性があることがありますので、当院までご相談ください。また痛みと共にしこりなどの症状がある場合にも乳がんの可能性がありますので、同じくご相談ください。
胸や乳房に痛みを感じた場合に考えられる病気には次のようなものがあります。
30~50代の方に見られる疾患で、女性ホルモンの乱れによって乳腺に病変が起こるものです。乳房の圧痛や張り、しこりといった自覚症状が見られます。良性の疾患なので、検査の結果乳腺症と診断された場合は、基本は経過観察を行います。
乳房の中にある乳腺が炎症を起こし、痛みや熱感、腫れを伴う病気です。乳腺は母乳を乳頭の先まで運ぶ役割を司る器官ですが、この乳腺が母乳の滞留や細菌感染等によって炎症を起こすことがあり、これが乳腺炎と呼ばれます。乳腺炎は産後2~3週間頃に発症する例が多く、発症の頻度は2~33%程度とされています。
乳腺にできる良性の腫瘍で、10代から20代の方に多く見られる病気です。女性ホルモンの乱れによって発症するものと考えられ、しこりも感じられますが、しこりそのものは触っても痛みは感じません。年齢が上がってホルモンの分泌状態が変化するにつれて自然に消えていく例も多く見られます。
乳房にできる腫瘍の中でも発症の割合が少ないもので、楕円状の柔らかな腫瘍ができるものです。2~3ヶ月といった比較的早い時間で増殖し、葉のような形で大きくなります。乳腺組織を構成する上皮である乳管細胞と、間質細胞(線維芽細胞など)のうち、間質細胞が腫瘍となって増殖するもので、良性、境界病変、悪性に分類されます。基本的な治療方法としては手術による摘出です。
月経前のイライラや情緒不安定のほか、胸の張りやむくみなどの症状が見られます。個人差がありますが、月経前の3~10日の期間に見られることが多い症状です。多くの場合、月経の開始に伴って症状が軽快、消失していく傾向があります。
主にデスクワークをする方に多く見られるのが、肩こりを原因とする胸の痛みです。肩こりによって肋間神経の付け根が圧迫され、胸の痛みとなって症状が現れるものです。
肺炎や肺がん、胸膜炎、帯状疱疹などの病気や、外傷などの原因によって肋骨の下にある神経が影響を受けて痛みを感じるものです。局所的に痛みを感じることが特徴です。
肋軟骨に炎症が起こるもので、ティーツェ症候群とも呼ばれます。肋軟骨は肋骨と胸の中央にある胸骨との間にある軟骨を指しますが、深呼吸やくしゃみをした時にこの部分に痛みを感じます。 20~40代の方に多く見られます。
生理前の時期は一時的に女性ホルモンの濃度が上昇しますので、それが胸の痛みや張りなどの症状を引き起こすことがあります。通常は生理の開始によって症状が消えていきますが、生理が終わったのに胸の痛みがなかなか消えない場合や、他の部分にもしこりがある場合にはお早目に当院までご相談ください。
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胸の痛みが強く我慢ができない場合は、消炎鎮痛剤(ロキソプロフェン、アセトアミノフェン)の投与を行います。胸の痛み以外に乳房の腫れや熱を持っている場合は、炎症性乳がんや乳腺炎の可能性がありますので、必要な検査や生検を行った上で、症状に応じた治療を行います。